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李碧華著 田中昌太郎訳「さらば、わが愛 覇王別姫」(ハヤカワ文庫NV)

【掲載開始日】2008年5月 2日


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それほど長い小説ではありませんし、わりと読みやすいのですが、読み終わるのに1ヶ月もかかってしまいました。一気に読める小説かもしれません。けど、小説を一気に読むのはもったいないです。

先月のお芝居を思い出しながら読んでいたのですが、この小説は中国の近代・現代史の歴史小説のようです。時代に翻弄され、葬られそうになった京劇に光を当てながら。

貧しくても才能があって、子供の頃から大変な修行をし、でも京劇俳優になれれば、彼らはエリート。素晴らしい芸を見せられれば良いのです。学歴も出生も関係ない。京劇の舞台が彼らの居場所なのです。特に蝶衣にとっては。
それを取り上げられたら、おしまい。何度となく繰り返される京劇の危機を、その都度命がけで守っていく。けれど、文化大革命の時だけは守りきれずに、舞台から離れなくてはならなくなる。

芸能は政治と無関係に見えて、そうではない。権力者は芸能芸術をいつも利用する。

蝶衣、小楼、と小楼の妻菊仙との三角関係が主軸の話ではないと思います。男2人の間は兄弟愛です。女役であっても、女ではないのだから、「兄」の妻菊仙に対しては嫉妬というよりも、「弟」として彼女の事を好きでなかった。蝶衣のおかあさんと同じ娼婦だったからでしょうか。それで最後に酷い事を言ってしまったのだけれど。「兄」を守りたいがために。

先月のお芝居では、傷つけあい、居場所を取り上げられて、自刃してしまう蝶衣ですが、小説では生きて行く事を選びます。それは生きていれば小楼にまた会えるのではという気持ちがあったからか、菊仙を死に追いやったという罪の意識からなのか。京劇を出来ずに生き抜く方が、つらい日々だったでしょう。

老齢になったふたりが出会って、「覇王別姫」をうたいます。虞姫の自刃はお芝居、それももうお終いだと。
蜷川演出の最後も「覇王別姫」のシーンでした。あれもこういう意味だったのでしょうか。

この本は中国語から英訳されたものを翻訳したのだそうです。原書からの翻訳でないのには、特別の理由があるのかなあ。

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さらば、わが愛 覇王別姫
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