一昨年に兄の結婚式があった。
引出物はペアのロックグラス。
父はあれを使っているだろうか?
たぶん大事にしまい込み、使ってはいないだろう。
結婚式での父はそれはそれは酔っぱらい、何度も何度も同じ話をしていた。
あまりの事に私が父に注意をすると、
「それだけ嬉しいのだからいいのよ」と私が伯母にたしなめられたっけ。
そうか、よっぽど嬉しいからなのかぁ・・
父と息子、男同士。
娘には分からない会話があり、絆があったりする…。
…
兄が高校生の頃、父の財布からお金を拝借しているのを、私は何度か目撃した。
私はそれを黙っていたが、ある日、
兄とのけんかの腹いせに、兄のいないところで父に告げ口をする。
「お父さん、知ってるの?お兄ちゃん、お父さんのお財布からお金を盗んでいるんだよ!」
そんな私の剣幕とは裏腹に、父は動じることもなく、
「うん。」
それだけ。
父の顔は少し笑っているようにも見えた。
私はあまりにも拍子抜けして、それ以上何も言えずに父の部屋を出るしかなかった。
父は知っていたのだ。
知っていて、言わなかったのだ・・。
…。
そんなこともあったけ。
「・・30になったときうまいバーボン飲むのさ~ ・・」
そーいえばあの頃、兄の部屋から繰り返し響いていた歌に、そんな歌詞があったのを思い出す。
兄ももうすぐ32歳。
大人になって12年。
私も一応大人になった。
兄の結婚式でこんなスピーチをして下さった方がいた。
「・・彼の仕事の判断は売れるか売れないかではなく、まず正しいか正しくないかである。・・」
私はその言葉がなんだか嬉しくて泣けた。
そして父はそれ以上に嬉しかったと思う。
たぶん父はあの日のことなど忘れていると思うけど。
兄の32歳の年には、父と兄へ、バーボンではなく「響12年」を贈ろうと思う。
日本的でさりげなく、優しくて柔らかい味わいで、きっと二人にはバーボンよりも似合うでしょう。
大事にしまっているあのペアグラスを出し、父と息子、男同士でグラスを交わすのが目に浮かぶ。
そんな二人の背中に、私はちょっかいを出す。
そして母がじゃまをし、弟がつっこみを入れ、義姉が笑う。
また新しい家族の12年が熟してブレンドし、響きあう。

サントリー HIBIKI 12年 700ml